刑法・少年法改悪に異議あり!緊急アクション  「改正」少年法の問題


少年法・刑法「改正」に反対する共同声明

共同声明(PDF版)

2022年5月20日更新

■「特定少年」…なんじゃそりゃ?…図解 改正少年法


---図7---


 「改正」された少年法においては、18~19才を他の少年と同様に全件家裁送致とするものの、「特定少年」として別扱いにし、原則検察送致(逆送)とする対象犯罪を、殺人など「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」犯罪から懲役・禁錮の「短期1年以上」の犯罪に拡大し重罰化するというものです。また、起訴後は「推知報道の禁止」を解除し(実名報道も可能)、少年法における少年保護のための刑事事件の特例条項(資格制限や換刑処分の免除・不定期刑の適用)も適用しないとしています。
家裁による処分においても、ぐ犯は処分対象とせず、健全育成のための「要保護性」ではなく「犯情の軽重」によって処分を決定するというもので、少年法の趣旨を大きく歪め、少年の更生・社会復帰を大きく阻害するものです。政府が「推進しよう」という「再犯防止」にも逆行するでたらめな「改正」案でしたが、拙速審議で成立してしまいました。


「家裁による処分」:家庭裁判所においては、少年鑑別所における鑑別、家庭裁判所調査官による「調査」が行われ、「審判」(少年審判)においては非行・犯罪の事実認定とともに、当該少年に対して「保護処分」を行う必要があるか否かということが判断される。調査~審判の結果、家族との関係や生活状況に鑑みて保護が必要であると判断された場合は保護処分が決定される(要保護性による保護処分決定)。非行・犯罪行為はないとされた場合でも、ぐ犯(虞犯=非行・犯罪を行うおそれがある)とされ、保護が必要と判断されれば保護処分が行われる。家裁は、18歳未満であれば、児童保護施設での保護という決定の選択肢がある。しかし、18~19歳は児童保護法の対象でないため、保護が必要と判断した場合は少年院送致か保護観察による保護処分しかない。本来、非行や犯罪に至る前に必要な支援が行われるべきだが、しかし、18~19才の少年にとって少年法による保護決定が最後のセーフティネットになっている…というのが実態である。改正少年法では、18~19歳(特定少年)について、ぐ犯は処分対象にしない、処分の内容も「犯情」の範囲で行うとしているので、この“最後のセーフティネット”がなくなる。


「犯情」:犯罪行為自体や犯罪の経緯に関する事情。被害者との関係、犯行の動機、被害者の人数・状況、被害の程度、犯行の回数、共犯関係(人数、役割)など。刑事裁判における量刑の判断基準。


報告:5・10 少年法改正を考える院内集会


 2021年5月10日(月)12時から、刑法・少年法改悪に異議あり!緊急アクションの主催で参議院議員会館B103会議室において「少年法改正を考える院内集会」を開催しました。以下は、同集会での講演の報告です。


■講演『少年法改正の背景と自己責任論の帰結…「行為責任」論が浸食する少年非行への理解』

 講師:佐々木光明さん(神戸学院大学教授 刑事法・少年司法)

講演の概要:

 今回の少年法「改正」-少年年齢引き下げの議論の端緒は、投票年齢を「18歳以上」と定めた2007年5月に制定された国民投票法。これを受け公職選挙法改正で被選挙権が18歳に引き下げられ(2014年)、成年年齢を18歳に引き下げる民法改正(2018年)が行われた。

 1990年代以降、「新自由主義」に基づく「構造改革」・「規制緩和」の政策が推し進められ、いわゆる「自己責任」論が強調されるようになった。経済界は企業活動の自由拡大のための法・制度の改正のみならず、将来の持続的な企業の成長に不可欠な人材として“組織ルールを尊重・把握し執行に邁進する「規範意識」を強く持った人材を排出すること”を社会的教育的価値として重視したのである。

 自己責任原則の徹底が求められた結果として、規範意識が薄弱な者への制裁は社会的価値を棄損した自己責任であるとされ、厳罰化を正当化する根拠となったのであり、2000年の少年法改正を契機として、刑事基本法の全面的改正が行われてきた。

 非行少年が抱える問題とその背景への関心が希薄化するなか、その存在は将来の「不安要因」「不安定化要因」と捉えられるようになってきている。懲罰的対応の強化による社会の安全・安心の確保という治安対策が前面化された法制度・刑事法改正の典型が今回の少年法改正案であるといえる。

 法務省・検察は、旧少年法の「検察先議」にこだわっていた。しかし、1947年に改正された戦後の少年法は「家裁先議」に転換し適用年齢も18歳から20歳未満に引き上げられた。1966年の法務省「少年法改正に関する構想」は、家裁の社会調査や鑑別所の鑑別機能を集約し「青年層」に活用するとし、「公共の安全」「国家の将来」のためには検察官の関与が不可欠であるとした。これらは1970年の「少年法改正要綱」としてまとめられたが、教育主義を変質させるとして最高裁・日弁連が反対し「青年層」の議論は収束。しかし、2000年以降、少年法の第1次改正(2000年)から4次にわたる改正(2007、2008、2014)まで、検察官関与が段階的に導入・拡大されてきた。

 今回の少年年齢引き下げ議論―少年法改正はこうした歴史的な文脈を踏まえ、未来への展望の中で考えていく必要がある。少年司法は非行少年が「やり直せる」という基本的価値感を制度全体の基礎に置いている。「犯情の軽重」を判断基準に据えるという改正案は、18~19歳のみならず家裁調査官による「要保護性」に基づく「調査」に変容をもたらすことになるだろう。戦後の少年法は、少年を司法の手に委ねるのではなく専門家が関与してその処遇を決めるという大きな実験として続いてきた。私たちは、将来、その実験を止めてしまうという選択をするべきであるのか真剣に考えなければならない。 以上 (緊急アクションYG)


■少年法「改正案」が成立:立法事実のない無茶苦茶な法改正


 少年法「改正案」は2021年2月19日に閣議決定され国会に送付。3月25日に衆院本会議で趣旨説明、4月6日の参考人質疑から法務委員会の審議が始まりましたが、16日に採決され、20日の本会議で衆議院を通過。参院法務委員会は5月6日の参考人質疑から始まり、(当初18日に採決とされていたが入管法がらみで中止された…ものの)20日に採決、21日に参院本会議で採決され可決・成立しました(2022年4月1日に施行)。両院あわせて実質30時間ほどの拙速審議での成立でした。

 本法案の前提となった法制審議会(少年法・刑事法部会)の議論においては、少年犯罪が減少傾向であり、また、現行の少年法が同法の目的である「少年の保護・健全育成」という点で良く働いているということは委員や幹事など全体が同意する共通認識で、国会審議においても野党側は「立法事実がない」と追及しました。

 上川法務大臣は、衆参の法務委員会で“18~19歳は可塑性に富んでいるため「特定少年」として少年に留めるとしました。その一方、公選法・民法改正によって社会的な活躍が期待されるのでそれなりの責任も負うべき。刑事処分となった場合も少年院で培われた知見を生かして処遇を行う”などという答弁を繰り返すのみ。(1)ぐ犯を保護処分の対象から排除、(2)「犯情の軽重」に基づき保護処分を決定(保護処分適用の限定)、(3)逆送対象犯罪の拡大(重罰化)、(4)少年の刑事事件の特例(資格制限や換刑処分の免除・不定期刑の適用)から排除、(5)起訴後の推知報道の解禁など、18~19才を「特定少年」として別扱いし、健全育成を目的とした少年法の趣旨を実質的に変更する立法事実(立法の根拠となる社会における事実)は終ぞ説明されることはありませんでした。結局、公選法・民法における成人・成年年齢引き下げを受けた政策的な法改正以上でも以下でもないということです。

 上川法相は、2021年3月に開催された京都コングレス(第14回 国連犯罪防止刑事司法会議)の議長として「誰一人取り残さない(国連持続開発目標2030)」を強調しましたが、今回の少年法改正はその発言に明らかに反するものです。犯罪を犯した18~19才は広く刑罰を科されるのみならず、実名報道―ネットでの拡散によって一生社会からバッシングされ続けることになるでしょう。社会復帰(政府のいうところの「改善更生」)を阻む大きな壁になるのは当然で、政府の「再犯防止」対策にも逆行する愚行というほかありません。

 私たち、刑法・少年法改悪に異議あり!緊急アクションは準備会を経て2021年1月30日に結成集会を開催。『少年法・刑法「改正」に反対する共同声明』への賛同を呼びかけるとともに、4月9日に国会前での昼の抗議情宣、同月11日に反対集会、5月10日に国会前抗議情宣と院内集会を開催。反対の声は拡がりましたが、残念ながら少年法改悪を許してしまいました。

■「週刊新潮」改正少年法の施行に先立って明らかに違法な実名報道


 衆参両院は、「特定少年」の起訴後の推知報道(実名報道)の解禁について「更生などの妨げにならないような配慮の周知を政府に求める」付帯決議を採択しましたが、まったく意味はありませんでした。
 2021年10月に甲府市内で夫婦が殺害され放火された事件で、「週刊新潮」(2021年10月28日号)は、2021年10月12日に山梨県甲府市で発生した放火・殺人事件に関し、被疑者とされた(家裁での少年審判も開始されていない)19歳の少年の実名、顔写真及び在籍高校名を掲載。
 同誌の発売日である10月21日、山梨県弁護士会が会見を開いて抗議。翌日には日本弁護士会も会長声明を出して抗議。神奈川県弁護士会なども抗議の会長談話を発表しました。
 この「週刊新潮」の報道は、少年の氏名、年齢、容ぼう等により当該事件の本人と推測できるような記事又は写真の出版物へ掲載すること(「推知報道」)を禁止した少年法61条に反しています。 2022年4月1日施行の改正少年法の下であっても許されないものです。
 2022年4月8日、甲府地検はこの19歳の特定少年を起訴して実名を公表。翌9日の新聞各紙が一斉に実名報道に踏み切りました。
 2022年2月に土浦市で男性が死亡した傷害致死事件では、5月19日、水戸地検が19歳の特定少年2人を起訴し氏名を公表。
 最高検は、2022年4月の施行に先立ち2月8日、起訴された18~19歳の実名公表の基準を明らかにし、全国の高検、地検に伝えたとしています。裁判員裁判の対象事件など「犯罪が重大で、地域社会に与える影響も深刻な事案」を実名公表の検討対象とし「社会の正当な関心に応えるという観点から公表を検討すべきだ」などとしています。

■少年法 法制審の経過 少年年齢-最後は「国会の議論に委ねる」


 公選法の選挙権年齢・民法の成年年齢の引き下げを受け、《少年法における少年年齢引き下げの是非》に「再犯防止」のための刑事法全体の「改正」を抱き合わせて、2017年2月、法務大臣から出された「諮問103号」で始まったのが…法制審少年法・刑事法部会。審議では、少年法は少年の健全育成・更生のために制度として有効に機能しているという認識のもと、しかし…そもそも、引き下げる必要があるのかという議論は進めず止めました。代わりに「18~19歳が少年でなくなる」としたら、現在の少年法に代えて(同等の効果のある)制度を創れるか?という趣旨で議論を開始しました。
 当初は、18~19歳を成人(20歳以上)と同様にまず検察に送り、起訴猶予になった場合には家裁に送り少年審判制度と同様の取り扱いをしたらどうか?…などという案が提起されました。しかし、そもそも起訴猶予ということは犯罪としては軽い事案であり、その後家裁に送られたとしても処分しないという決定になり意味がないのではないか?など、議論は煮詰まりませんでした。

 現在の少年法が、18~19歳を含めた少年にそれなりにうまくいっているのに、変える(改正する)必要があるのか?という根本的な議論がなされないまま審議が進められたのだから当然です。
 未成熟な少年には刑罰を与えず健全育成のために保護しようという少年法と、成人と同様に犯罪の重さに見合った刑罰を科そうという刑法の中間的な制度を創ろうなどというのはそもそも無理な話です。

 与党議員からも「少年法の年齢引き下げ反対」の声が上がるなか、法務省は2020年1月から法制審の審議をハイペースで開催し「答申」を作ろうとしました。しかし…新型コロナで審議はストップ。その後…法務省はなんと…与党に根回しをし、最後は少年年齢の引き下げ-18~19歳の扱いは「国会の議論に委ねる」などということで話をまとめました。そして、3年半にわたる法制審の議論の前提を覆し「国会に委ねる」などという答申案を提起し、ほぼ議論抜きで部会を終了。同年10月29日、法務大臣に「答申」として提出しました。

 法律案(改正案)の作成に当って、その是非を含め専門家・有識者等に諮るというのが法制審議会…3年半も審議して最後は「国会に委ねる」などという答申案を提起するのは自らの存在理由を否定するに等しいことです。法務省が大勢の御用学者を取り揃えてやった結果-「答申」がそういうこと。無茶苦茶です。
上記のように少年法「改正」案は無茶苦茶な経過で成立し、本年4月1日から施行されました。



刑法・少年法に異議あり!緊急アクション

keihoh.org

Mail:action@keihoh.org

■連絡先:救援連絡センター

東京都港区新橋2-8-16石田ビル5階

TEL:03-3591-1301


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