少年法・刑法「改正」に反対する共同声明

1.国の基本法を変えるためには、政治決着ではなく、徹底した討論が必要。


 少年法「改正」案が、2月19日に閣議決定され、通常国会に上程されました。「改正」案は、法制審議会による昨年10月29日の答申を踏まえたものです。しかし、同答申には大きな問題があるとして、法学者や元家庭裁判所裁判官、日本弁護士連合会や日本精神神経学会など少年法・刑事法に関連する各界・団体から強い批判が出ています。
 4年前に諮問され約3年半もかけて審議された法制審議会少年法・刑事法部会は、異様な審議経過をたどりました。同部会の論議は、少年(少年・少女)年齢引下げか否かをめぐって最終局面で混迷し、結論を与党PT合意に委ねるものになったからです。法務に関する基本的な事項を調査審議する専門機関としての法制審の権威を失墜させ、その存続意義すら疑われる事態でした。しかも答申は「年長少年」の位置付けや呼称は「今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である」としました。これは国の基本法を政治的談合や数の力で決めようとするものであり、未来に大きな禍根を残します。


2.少年法「改正」法案は現行少年司法制度を破壊する。


 国会に上程された政府の少年法「改正」案は、少年年齢引下げをせず、検察庁から家裁への全件送致制度は維持したものの、これまで年長少年とされていた18歳・19歳を、成人でもなく18歳未満の少年とも異なる「特定少年」として、成人に近い処遇をし、厳罰化することが図られています。また家裁から刑事裁判所への「原則逆送」の適用対象が、殺人などから強盗・強制性交罪などの犯罪にまで拡大され、また安易に「ぐ犯」処分(罪を犯すおそれがある少年の保護)や不定期刑適用をなくす、など刑事事件における少年特例のほとんどが適用されなくなっています。2020年の場合、原則逆送の対象は現行法では3人ですが、改正案が適用されれば52人になり、大幅に増えます。それは、保護処分の選択に際して犯情の軽重のみを強調するなど年長少年に対する調査・処遇のあり方を大きく変容させ、現行少年法の立ち直り支援、健全育成の理念からはかけ離れたものになります。実名(推知)報道についても、逆送された後に検察官が公訴提起すれば解除されるなど、社会的排除・バッシングを容認するものになっています。
 「改正」案は、「少年の健全な育成を期す」現行少年司法制度を大幅に改変し変質させます。それは、専門の調査能力などをもつ家庭裁判所、家裁への全件送致主義、刑罰ではなく、可塑性に富む少年の保護処分優先主義、推知報道の禁止などを、制度的骨格とする少年法の成長発達権保障の理念を実質的に破壊するものです。このような「パターナリズム」からポリスパワー・厳罰主義への急旋回は現場に大きな混乱を残すだけです。私たちは「改正」案に強く反対します。


3.少年法「改正」の立法事実はない。今は少年の命と生活を保障することが先決問題。


 今、少年法を「改正」する立法事実はありません。現在、刑法犯は成人・少年ともに18年連続で減少して2020年は戦後最少となり、また再犯者数も減り、現行少年法が有効に機能している(5年以内の成人の刑務所再入者37.5%に比して、少年院など再入者は22.7%と低い)ことは、法曹関係者の一致した見解です。
 コロナ・ショックは少年をも襲っています。学習や進学の機会が奪われ、アルバイトすら雇止めされ、子ども食堂によって命を繋がざるをえないなど、少年の生活と命が危機に瀕しています。ステイ・ホームが叫ばれますが、児童虐待増に見られるように、少年にとって家庭は必ずしも安住の地ではありません。少年の精神的・生活的安定帯を構築すべき時に、健全育成の理念すら破壊し厳罰化するのは愚かです。私たちはこんな時だからこそ「改正」案を廃案に追い込む必要があります。


4.刑法等「改正」法案の国会上程に反対する。


 法制審答申は、少年法だけでなく刑法・更生保護法など刑事法全般にわたっており、刑法等「改正」法案は、少年法改正と切り離して、次の国会以降に上程されます。それは113年ぶりの刑法「改正」であり、この重大性は見過ごせません。私たちは刑事法「改正」と少年法「改正」は一体の予防刑法であると捉え、反対します。
 詳しくは法案段階で批判しますが、法制審答申は、懲役刑と禁錮刑を一本化し「新自由刑」(仮称)を創るとして、国際基準に逆行して懲役刑を存続する、「必要な指導」を受けることを受刑者に義務化し、強制的な「人格改造」を狙う、おおむね26歳未満の「若年受刑者」の処遇原則新設は、制度次第では罪刑法定主義を侵害しかねない、執行猶予期間中に罪を犯し、執行猶予終了後に再犯の判決が確定した場合に執行猶予を取り消すことができる、新たなアセスメントツールを活用した保護観察処遇の充実や特別遵守事項類型の追加など保護観察を広い範囲で活用しようとする、など予防刑法的側面を持つ刑法の全面改悪を狙っています。私たちは、少年法「改正」に反対するとともに刑法全面「改正」にも反対します。


5.予防刑法・市民社会の保安処分化、相互監視社会化に反対する。


 刑法等「改正」は社会に重大な影響を及ぼします。既に述べたように、刑事法全般にわたる「改正」がなぜ今、必要なのか、その根拠は明らかではありません。しかし政府・法務省は、再犯防止法や犯罪対策閣僚会議決定によって、すでに現場で先行的実態化を進めています。刑事司法主導で福祉・医療の治安的利用が強化され、様々なNPOを「再犯防止」「健全な社会意識涵養」に動員しています。民衆を互いに監視・管理させることになりかねません。コロナ感染者差別が蔓延する中で、更に差別・排外を助長することなど許されません。すでにコロナ・ショック下の米国では、黒人など「有色人種」を中心に保護観察の遵守事項違反や微罪で刑務所に再収監される事態が頻発している、とアメリカ自由人権協会などが警告を発しています。コロナ感染者差別が蔓延する中で、更に差別・排外を助長することなど許されません。
 少年法・刑法、刑訴法・更生保護法等の大「改正」は、医療観察法や共謀罪法制定で突破した予防刑法体制の最後の仕上げです。私たちは、このような予防刑法・市民社会の保安処分化、相互監視社会化に反対します。


2021年3月




刑法・少年法に異議あり!緊急アクション

■連絡先:救援連絡センター
東京都港区新橋2-8-16石田ビル5階
TEL:03-3591-1301

【呼びかけ人】


足立昌勝 (関東学院大名誉教授)

石橋新一 (破防法・組対法に反対する共同行動)

岩田 薫 (環境NGO「全国環境保護連盟」代表)

大口明彦 (弁護士)

新屋達之 (福岡大学教授)

関口明彦 (心神喪失者等医療観察法〔予防拘禁法〕を許すな!ネットワーク)

永井美由紀 (関西救援連絡センター)

西山直洋 (全日建運輸連帯労組関西生コン支部)

丸山重威 (日本ジャーナリスト会議、元関東学院大学教授)

山中幸男 (救援連絡センター事務局長)

山中雅子 (刑法改悪阻止!保安処分粉砕!全都労働者実行委員会)


【賛同人、順不同】


相蘇道彦 (北部労働者共同闘争会議)

吾郷健二 (西南学院大学名誉教授)

浅野史生 (弁護士)

渥美昌純 (デモ・集会くらい自由にやらせろ!実行委員会)

荒木龍昇 (福岡市議会議員)

安藤裕子 (共謀罪新設反対!国際共同署名運動)

池田五律 (戦争に協力しない!させない!練馬アクション)

池原毅和 (弁護士)

石下直子 (子どもの未来を望み見る会)

石塚伸一 (龍谷大学教授)

石津文代 (多摩中ユニオン)

石村 修 (専修大学名誉教授)

一瀬敬一郎 (弁護士)

伊藤和行 (東京・中部地域労働者組合・旭ダイヤ)

稲益久仁子 (日本基督教団埼大通り教会伝道師)

稲本誠一 (反弾圧研究会、茨城)

井上 森 (立川自衛隊監視テント村)

井前弘幸 (大阪府堺市)

岩井 信 (弁護士)

大谷 久 (連帯労働者組合・大道測量)

太田裕生 (三多摩労働者法律センター)

大西紀子 (たがわ生協労働組合執行委員長)

大洞俊之 (三多摩労組争議団連絡会議)

岡田靖雄 (精神科医)

岡田行雄 (熊本大学教授)

小川光郎 (弁護士)

小椋結子 (国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会)

尾澤孝司 (日韓民衆連帯委員会)

越智祥太 (医師)

小畑太作 (日本基督教団宇部緑橋教会牧師)

神谷右近 (破防法・組対法に反対する共同行動)

川口浩一 (全国金属機械労働組合港合同南労会支部執行委員長)

川村 理 (弁護士)

上林茂暢 (龍谷大学名誉教授)

北田美智子 (兵庫県神戸市)

久保田順哉 (メトロ・S対策会議)

倉田千鶴子 (横浜市)

国分真一 (南部地区労働者交流会)

輿石悦子 (連帯労働者組合)

小島利男 (破防法・組対法に反対する共同行動)

佐藤和友 (三多摩合同労働組合東海技研分会)

斎藤 隆 (三多摩合同労働組合・ホッタ晴信堂薬局闘争)

境沢淳子 (連帯労働者組合・ライフエイド)

佐々木通武 (中部地区労働者交流会)

佐々木光明 (神戸学院大学教授)

芝崎眞吾 (有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会)

清水雅義 (東京・中部地域労働者組合)

清水真理子 (全関東単一労組)

杉原浩司 (武器取引反対ネットワーク NAJAT)

杉山律子 (東京・中部地域労働者組合・東邦エンタプライズ)

関根延元 (三多摩合同労働組合三信自動車)

瀬戸 聡 (明治大学生活協同組合労組))

高井由季子 (学校と地域をむすぶ板橋の会)

田中聡史 (東京都国分寺市)

谷 卓哉 (三多摩合同労働組合幹福祉会分会)

辻田信一 (三合労ケミカルプリント分会)

土屋 翼 (国賠ネットワーク)

内藤進夫 (あぱけん神戸)

中川信明 (東京都練馬区)

永島靖久 (弁護士)

大西章寛 (立川自衛隊監視テント村)

中野英幸 (足立区)

中山善博 (三多摩合同労働組合)

西村正治 (弁護士)

橋本久雄 (国立武蔵病院(精神)強制・隔離入院施設問題を考える会)

長谷川幸枝 (西部地区労働者共闘会議)

林 武文 (ゆにおん同愛会)

平野貞之 (北部労働者法律センター)

藤田五郎 (差別排外主義に反対する連絡会)

伏見 忠 (東京都武蔵野市)

星山京子 (日本基督教団羽生の森教会牧師)

まえだヒソカ (福岡市民救援会事務局長)

松浦 聡 (東京南部労働者組合)

宮本弘典 (関東学院大学教授)

村上弘樹 (三多摩合同労働組合・鶯啼庵闘争)

森口秀樹 (精神科医)

山口 直 (連帯労働者組合・武蔵学園)

山口創一 (刑法改悪阻止!保安処分粉砕!全都労働者実行委員会)

山口玲子 (福岡地区合同労組代表執行委員)

山下幸夫 (弁護士)

山本眞理 (精神障害者権利主張センター・絆会員)

山脇晢子 (弁護士)

和田香穂里 (前西之表市議)

和田 伸 (「軍事基地はいらない」種子・屋久島民の会)


        (6月2日現在)


■賛同のお願い
 共同声明への賛同をお願いします。

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刑法・少年法に異議あり!緊急アクション action@keihoh.org